Past Exhibition
2020.11.7(sat) - 12.19(sat)
事前予約制
Reservation only
2020, (C) Wolfgang Tillmans
2009, (C) Wolfgang Tillmans
(C) Wolfgang Tillmans and WAKO WORKS OF ART, 2020
2020, (C) Wolfgang Tillmans
[本展は予約制です / Open by reservation only]
お客様同士のウイルス感染を防ぐため、同時入場者数に制限を設けた事前のオンライン予約制にて開催しておりました。
PRESS RELEASE [English]
ワコウ・ワークス・オブ・アートではこの度2020年11月7日(土)から12月19日(土)まで、ドイツ人作家ヴォルフガング・ティルマンスWolfgang Tillmans による個展『How does it feel?』を開催いたします。当画廊では6年ぶりとなる本展では、最新の写真作品を中心に構成した壁面インスタレーションと映像作品を展示いたします。
尚、本展の開催にあたりましてはお客様同士の新型ウイルス感染リスクを下げるため、同時入場者数に上限を設けた事前オンライン予約制でご案内いたします。当HPにございます専用サイトからご予約の上ご来場下さい。またご予約の際には併記の注意事項を必ずご一読賜りますようお願い申し上げます。[入場直前まで予約可能メール予約不可]
ヴォルフガング・ティルマンスは1968年にドイツのレムシャイトに生まれ、1992年に英国ボーンマス &プール・カレッジを卒業しました。その後ロンドン、ベルリン、NYを拠点としながら身近な友人たちやカルチャー・シーンをカメラに収め、その作品を戦略的にパープル紙やi-Dなどのファッション媒体に掲載しながら従来の写真界の価値体系に一石を投じて注目を浴びます。2000年にイギリスのターナー賞を受賞、これは写真を主な表現手段とするアーティストとして初の、そしてイギリス人以外でも初の受賞で、美術界における写真のあり方が変わるきっかけとなりました。その後も写真を主軸としながらサウンドや映像など表現手段を継続的に増やし、近年は社会問題にも積極的に関わっています。
今回、新型コロナウイルスの拡大リスクを鑑み来日を諦めたティルマンスは展覧会タイトルを『How does it feel?』として海を隔てた彼方から「どう感じる?」と語りかけています。前回の当画廊での個展『Affinity』(親和性)から6年、人のつながりが分断されてしまった現在においてより一層他者の存在を意識したこのタイトルは、決して自らの殻に閉じこもることなく、絶えず人とつながろうとし、他者の存在とその視点を愛おしみ制作の糧としてきたこのアーティストの本質=opennessをよく象徴しています。この開放性は作品の魅力とも直結しており、彼の写真は決して画面内で完結することなく、画面の外側、私たちが暮らすこの広大な世界そのものへと鑑賞者の意識を向かわせる力があります。
今回の展示のメインとなるのは、旧作から最新作までさまざまな時期に制作された写真作品と、その小ささと写真作品とは異なるコンテンツが展示全体に軽快なリズムを与える雑誌のページです。写真作品のサイズは多様で、メディウムもCプリントとインクジェットプリントが混在し、額入り、額無しの両方で展開します。ポートレイト(セルフを含む)、風景、抽象、静物などの多様なモチーフがあり、それぞれの写真は一見ありふれた日常の一場面のようでありながら、すべてが不思議な、言葉では分析しきれない輝きを放っています。それはこのアーティストが常に、歴史上の他者の創作におけるモチーフを可能な限り念頭におきつつ、それでもこのモチーフで現代において尚も新たなイメージが生まれ得るのか? それは本当に可能なのか? という厳しい問いを常に自らに投げかけながら制作しているからです。
近年は活動の幅を広げており、2018年にはベンジャミン・ブリテンの合唱曲《War requiem 戦争レクイエム》の舞台美術を手掛けて話題になりました。この舞台はコロナ禍が世界に広がる直前の今年2月に台湾にも巡回しており、その旅程で撮影した写真作品も本展には含まれます。そのうちの1点《crossing the international date line》(2020)はその名の通り国際線の機上で日付変更線を越える際に撮影された空の写真で、縦2.4メートルの額無しのプリントをクリップで直接壁に設置します。最新のデジタルカメラを用いても尚あらわれる認識の境界、現代の高感度センサー技術の限界点を示す無数のドットは、空に浮かぶ星と区別がつかなくなり、ミクロとマクロが混ざり合うその画面は、この世界は大きくつながっているのだという彼のメッセージがもっとも直接的に表現されている作品であるといえます。
また、ティルマンスは80年代からおこなっていた音楽活動を2016年に本格的に再開し、たて続けにレコードをリリースしています。彼の音へのこだわりは、著名なミュージシャンとのコラボレーションや美術館での個展にともなうライブ・パフォーマンスにとどまらず、各地での個展自体の構成にも活かされており、2017年のハンブルク・クンストフェラインでの展示では、デジタルプロジェクション(静止画と動画の投射)と物理的な写真プリントと立体作品とが遮光された薄暗い館内に並び、それらが展示空間全体に流れる彼のボイス・パフォーマンスによって一体化するというアコースティックな空間構成がなされました。本展では、コロナ禍のさなかにリリースされYoutubeの公式チャンネルでも公開されている新曲《Life Guarding》(2018/2020)の縦バージョンの映像と、コロナによる中断を挟んで先日までベルギー・ブリュッセルのWIELSで延長開催されていた個展でも展示されたばかりの《Tag ein Trip(One day Trip)》(2018)の映像作品も展示します。
時代とともに疾走するティルマンスが、愛する人々とともにイメージの奔流にもまれながら続ける創造活動の痕跡が展覧会となり、私たちの心や体を踊らせます。ノスタルジーに興味はないと語り、強い好奇心と冒険心をあらわにしてテクノロジーやメディウムの変化に対峙し続けることをやめない彼の表現は、時代がどのように変化しようとも常に刺激的で、常に現代的であることが約束されています。
[新刊発売情報]
12月下旬発売・税込3300円 『Wako Book 6 』
アーティストが自ら編集、デザインするWako Book シリーズの第6弾 詳しい発売日程はコチラ
[Wolfgang Tillmans ヴォルフガング・ティルマンス]
1968年ドイツ・レムシャイト生まれ、ベルリン在住。大学でデザインを学んだ後、ロンドン、NY、ベルリンに移り住む。1980年代から雑誌『i-D』等の媒体で作品の発表をおこない、1993年にドイツのギャラリーでの個展を皮切りに現代美術作家としての活動を開始。2000年ターナー賞受賞。各国の主要な美術館で個展を開催しながら活動を続けている。近年の主な個展には、セラルヴェス現代美術館(2016 ポルトガル)、バイエラー財団美術館(2016 スイス)、アイルランド現代美術館(2017 アイルランド)、テート・モダン(2017 英国)、WIELS(2020 ベルギー) などがある。2018年からはアフリカ大陸での初個展『Fragile』がコンゴ、南アフリカ、エチオピア、カメルーンを巡回した。日本では2004年に東京のオペラシティ・ギャラリー、2015年に大阪の国立国際美術館で大規模な個展を開催している。近年はポスターを通じた社会的な活動や音楽活動への参加も盛ん。
[展示上の重要なお知らせ]
本展では刺激の強い表現の作品も展示されます。いずれも多様な人間のあり方と視点を肯定するものですが、このような表現を不快に思われる方は、入場に際して事前にご了承いただくようお願い申し上げます。美術上の身体表現に不慣れな年齢のお子様とのご来廊をご検討されている保護者様にも、ご留意いただきますようお願い申し上げております。
[期間中の衛生対策とお客様へのお願い]
新型ウイルス対策につきまして衛生対策を次のように徹底いたします。
アポイント制での営業・お客様のご連絡先の確認・展示室内の換気・入口の消毒液設置及び入場者様への検温の実施・入口ドアの定期的な消毒・スタッフのマスク着用と定期的な検温・受付に飛沫防止パーテーションを設置
またお客様におかれましては、作品鑑賞上他のお客様との距離が十分に取れない場合もございますので、恐れ入りますがマスク着用の上でご体調が万全の時にご来場いただきますようお願い申し上げます。状況によってはマスク未着用の方は入場をお断りさせていただく場合がございます。
2週間以内に海外渡航歴のある方、渡航歴のある方と接触された方、発熱や咳などの症状がある方は、ご体調の回復をご優先ください。また少しでも体調にご不安のある方や高齢者ご本人、ご同居の家族様など、感染機会が懸念されるかたには展示環境を事前にご案内しておりますのでお気兼ねなくお問い合わせ下さい。展覧会終了後にはインスタレーションビューをオンラインで掲載いたします。万が一がございました際は政府の方針に従いまして、予約サイトに記入いただいたご連絡先に当方からご連絡を差し上げます。
WAKO WORKS OF ART is pleased to present How does it feel?, a solo exhibition of new and recent work by the German artist Wolfgang Tillmans which starts on November 7, 2020.
Wolfgang Tillmans, who had to give up plans to come to Japan amid the COVID-19 pandemic, asks us from beyond the sea, in the form of his exhibition title: How does it feel? Six years after Affinity, his last solo show at WAKO WORKS OF ART, the new title shows a concern with others that has only increased in our current era when interpersonal connections are so obstructed, embodying the artist’s essence: openness, never retreating into his own shell, constantly seeking to connect with others, treating people and their perspectives as precious fuel for his creative production. This openness relates directly to the appeal of the work, and Tillmans’s photographs are never sealed off inside rectangular borders, but have the power to direct the viewer’s consciousness to what lies beyond these borders, the vast world that we all inhabit.
The centerpieces of How does it feel?, an exhibition starting on November 7, are new and older photographs from various different points in the artist’s career, juxtaposed with pages from magazines, their much smaller size and contents differing from those of the photographs so as to give the overall show a nimble rhythm. The photographs are of diverse sizes, some C-prints and some inkjet prints, some framed and some unframed. They also vary widely in terms of genre, including portraits and self-portraits, landscapes, abstractions, and still lifes, and while each shot appears to be an ordinary scene from everyday life, everything is suffused with mysterious luminosity that resists verbal analysis. Is Tillmans able to keep the subjects of others’ artworks from throughout history fully in mind at all times, yet still create new imagery in the present tense?
Yes, it is possible, because while working he constantly subjects himself to the rigorous question: “Is this really possible?”
In recent years Tillmans has broadened the scope of his activities, and in 2018 he designed the sets for a staging of Benjamin Britten’s War Requiem, drawing widespread acclaim. This production traveled to Taiwan in February of this year, just before the COVID-19 crisis enveloped the world, and photographs taken during that trip are included in this exhibition. One of them, crossing the international date line, is as the name suggests a photograph of the sky taken when crossing the International Date Line on a trans-Pacific flight, in the form of a 2.4-meter-long unframed print hung directly on the wall with clips. Countless printing dots – visible even in photographs taken with the latest digital cameras, straining the limits of perception while also showing the limitations of current high-sensitivity sensor technology – become indistinguishable from stars in the sky in this image where the micro and the macro merge, in perhaps the most direct expression of the artist’s message about the world’s interconnectedness.
In 2016, Tillmans fully resumed the musical activities he began pursuing in the 1980s, and has released a series of recordings. In addition to collaborations with well-known musicians and live performances in conjunction with his solo exhibitions at museums in various countries, he incorporates sound into the exhibitions themselves. His show at the Kunstverein in Hamburg in 2017 was divided into two areas, with digitally projected still and moving images in a dim space separate from the area containing physical photographic prints and 3D works, and the entire venue united as an acoustic space by Tillmans’s vocal performance played back throughout. How does it feel? features two moving-image works, one a vertically oriented version of a video for his new single Life Guarding, released during the depths of the COVID-19 pandemic and viewable on his official YouTube channel, and the other Tag ein Trip (One Day Trip), which was on view until very recently at Wiels Contemporary Art Center in Brussels, Belgium that resumed after closure due to the pandemic.
Tillmans moves with our turbulent times, and this exhibition showcases the results of his creative activities, which continue unabated, in collaboration with many important people in his life and amid a ceaseless torrent of images, to the mental and physical elation of viewers. He has stated that he is uninterested in nostalgia, and his powerful curiosity and adventurous spirit are plainly evident, as is his consistent willingness to take on the challenges of new technologies and media. No matter how the times change, we can be sure that Tillmans’s work will always be inspiring and will always remain contemporary.